Super Utility Darling
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本編>side芭唐

 

俺が突然呼び出しを食らったのは野球部に出入りするようになって一週間も経った頃か。
入部届はまだ出していないから正式に野球部員ってわけじゃない。でもまあ入部試験はパスしたみたいだからこのままいったら部員になるんだろう。練習にも出てるし。
どんな話をされるんだか知らないが、俺は結構朝からウキウキしていた。
屑桐さんときたらガードが固くて今のところ殆ど近付けないからな…。
だいたい俺は入部する前から、いや入学する前から屑桐さんの存在を知っていたというのにあの人ときたら俺のことを
全く知らないばかりか、入部試験でホームランかっ飛ばしたっていうのに大して構ってもくれないので本当にヘコむ。
信じられないよ本当…。もう最大限にアピールしてやろうと思ってホームラン打った後思いっきり挑発してやったのにまるで無反応だったのにはもうムカつきを通り越えていっそ傷付いた。
(動じなさすぎだろ?)
もうあの鋼鉄のような表情をなんとかして崩してやりたい。ギャフンと言わせてやりたい。だが先ず近づくことが出来なければお話にもならないのだ。

そんな相手が向こうの方から俺を呼び出している。一対一で。

またとない機会にニヤケながら屋上に辿り着くと屑桐さんは既にそこに居た。
ありゃ。遅れたか。
「遅くなってすんません」
と言うと、
「大丈夫だ。まあ話ってのは、大したことじゃないんだがな」
と彼は返した。そしてちょっと眩しそうな顔をすると、俺の背後を指差して、建物の影に移動しようと手で指示をした。


「何っスか?その話ってーのは?」
俺がダルそうに訊ねると、屑桐さんは後ろの壁に寄りかかって腕を組んだ。そして少し決まり悪そうな顔をする。ロクな話じゃねえな。
「まあアレだ…、俺はお前の実力はかなり買っているんだが、その、素行の方は少し何とかならないのか?」
はあ…そういう話か。まあ一応このヒト華武の主将だしね。
今年なんか最後の甲子園が控えてるんだ。俺が何かしでかしたらマズイんだろう。
そしてこんなことでもなければ、俺と二人で話なんてしようとはしてくれないんだろ?

「素行って?俺何かしましたっけ?」
げんなりした俺の回答は相当不機嫌に聞こえたのか、屑桐さんはなんだか慌てたみたいだった。
「いや…!オマエの素行などはどうでも良い話だったな。俺はオマエのことを心配しているんだ。この際きちんと言っておこう。いいか?よく聞け…」
俺の顔をじっと見つめながら屑桐さんは話を続けた。
部活の時の「主将の顔」とは違う、だけど真摯な視線。あ、このヒト俺のこと本気で心配してるのかもしれない。
そもそも俺の知っている屑桐さんはそれほどお喋りが好きな方じゃなかった。
そんな彼が部にやってきてほんの一週間程度の後輩相手にここまで一方的に「お話」を続けるということは、本人的にはかなり頑張っている状態に違いない。
(アンタって結構…可愛いね)
そう思った瞬間、ギャフンどころかもうヒィヒィ言わせたい欲望がどこかから湧きあがってきて、俺は知らずのうちに彼との距離を詰めていた。
さァて、どうすっかな。

「―――、というワケだ。で、どうなんだ?御柳」
「はい?」
「だから、2、3年連中とは上手くやれているのか?」
「ああ、先輩たちと…?問題無いっスよ。全ッ然上手くやれてますよー。」
「上手く…、そ、そうなのか?」
「ええ。仲良しっスよ。」
畳み掛けるように答える。屑桐さんは多少安心したような顔をしたが、すぐに訝しげな顔に戻り、こう言った。
「本当か?まあ、問題が無いと言うのなら安心だ。オマエは目立つからな…もしもということも考えていたんだ。しかし”仲良し”とはなあ…正直信じ難いぞ?いつの間にそれほど親しくなっていたんだ?」
予想通りの回答。


「知りたいっスか?」

俺は口の端を吊り上げてそう言うと、来た扉側に腕を立て、退路を塞いだ。
顔と顔が近づくと、屑桐さんが驚いた目でこちらを見ている。俺はゆっくり目を合わせると、軽く唇に触れ、空いた手で屑桐さんの股間を擦り上げた。
「御っ…御柳!?」
うろたえる彼をよそに片手で作業を続ける。
「どこを触って…っ……やめろ…御柳!」
屑桐さんが抵抗しようとしてきたので押さえつけて強めに扱いてやった。ビクリと反応して抵抗する力が弱まる。
彼自身が制服の前を押し上げ始めているのを確認すると、俺はさっさとベルトを外した。
「……っ!一体どういう…!?」
目が合うと屑桐さんの顔には見たこともない羞恥と狼狽の色が滲んでいる。災難だね、アンタも。
「さあ?」
意地悪く答えると外気に晒された彼のモノに舌を這わせた。
咥えずに、先端を何度もいやらしく舐め上げて刺激してやると硬く勃ち上がってきたので、少しだけ咥えて口で扱いてやる。
「…やめっ………あっ…!ふっ…」
先走りの汁が溢れる。
「気持ち良いっスか?」
顔を上げて訊ねると彼は俺から目を逸らして必死に快感に耐えているみたいだった。その表情が信じられないほど色っぽい。
「……こんなっ…馬鹿なこと止せっ…」
こんなのっぴきならない状況で放置されたら、困るのアンタでしょ?
俺は屑桐さんの腰を掴むと、今度は奥まで咥え込んで一気に扱いた。
「…はぁっ……!」
もう舌と唇を総動員して、感じてくれそうな場所を刺激する。ビクビク反応が返ってきたので思い切り吸い上げてやった。
「あっ…御柳…!…もう…っ」
耐え切れなくなった彼が俺の頭を掴んで引き剥がそうとしているので、今度こそもう逃げられないようにがっちり腰を押さえつけると舌を絡めたまま頭を激しく上下させる。


「………っ!!」

口の中にどくどくと熱が放たれた。
俺はそれをわざと音を立てて啜り、そして、上を見た。
屑桐さんが肩で息をしながら呆然とした顔でこちらを見ている。
唇に残った精液を舐めながら、意味ありげに視線を合わせると、反射的にそっぽを向かれた。ちょっと悲しい。
「はあ……オマエ、…まさか、こんなことを皆にしているという話じゃないだろうな!?」
「へ?」
一瞬間があく。

「アッハッハーーー!まさか本気で勘違いしちゃった!?もうするワケないじゃん!そんな趣味ねえっつうのーー!」
あまりに真剣に繰り出された質問に思わず噴き出してしまった。俺の爆笑が屋上に響き渡る。

「なっ…何!?じゃあ俺をからかってっ…冗談だったのか!?」
真っ赤になってしどろもどろになる屑桐さん。アンタうろたえすぎ。
ああ…本当に可愛いなあ。
腰に力が入らないのかバランスを失ってよろけた彼の体を支えてやった。
「屑桐さんて結構見かけによらないんですね」
「退け。俺は帰る。…御柳っ!放せ!……どこを触っている!?」
あんなカオするアンタが悪いよ。されてる時の表情、正直かなりヤバかったもん。

「アンタって本当に…カワイー」
「……わっ…御柳!あぶなっ………オイ!?何をする??」
「ねえ、俺したくなっちゃったんだけど。…良い?」
「一体何を言っ……やめろっ!…おい!!御柳ーーーーーー!!!」

屑桐さんの絶叫が4月の青空に吸い込まれていった。
下の方からはまだ昼休みの喧騒が聞こえてくる気がする。金属バットが硬球を打ち返すあの聞きなれた音も。誰か自主連来てんな。
まだ時間は有ると思うけど…ま、ダルかったらサボるから良いや。
今日はとても暖かい。
日当は暑いけどね。でも風がちょうど良いくらいに吹いていて、こういう日陰はもうすごく気持ちが良い。
あーー、今決めた。もう終わったらここで寝よう。
屑桐さんも付き合わせよう。この人たまには休んだ方が良いから。


だって今日は、絶好のサボり日和だし。
放課後はちゃんと部活出るからさ。