Super Utility Darling
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「キャプテンの憂鬱」



 最近、子津君の様子がどうもおかしい。
 いや、可愛くてプリティーで十二支高校野球部に咲く、可憐な一輪の花であることにはかわりないんだよ?
 …あの、子津君を狙って目をギラギラ、鼻息荒い連中の中で、素直で疑うことを知らない天使のように無垢な君……もう僕は、君が悪い虫の毒牙にかからないか、毎日心配で心配で眠れないよ。
 君が僕の恋人になってくれた奇跡。告白した時なんて、玉砕覚悟だったからね。でも、神様は僕に君という天使を下さった。ありがとう神様!もう、君の写真を枕の下に敷いて寝ることもない。だって、本物の君が毎晩、僕の腕の中にいてくれるんだから…。
 
 もう君を想って、一人自分を慰めるなんて、切ない夜を過ごすこともない。首にかけるパスなんていらないくらい。君は僕の家に通ってきてくれて、執事ともメイドとも、今じゃすっかり顔なじみ。…白状すると、多少強引に連れてきてしまっているのは分かっているさ。でも、君が悪いんだよ?そんな可愛い顔ではにかまれちゃ……欲しくならない男がどこにいるって言うんだい?

 君を家に連れこんで、とびっきりのディナーを用意させて。バスルームには真っ赤な薔薇を浮かべよう。蒸気で火照った頬も可愛いね。ほんのりピンクに色づいた頬。そんな君に比べれば、薔薇の赤なんて毒々しくて、禍禍しいことこの上ないよ。ああ、子津君、これ以上僕に君を好きにさせないでおくれ。君を失ったら僕は壊れてしまう。僕の心に舞い降りた天使よ。ずっと僕の傍にいてくれると誓っておくれ!!!

「お願いっすから…ベットに…」
 バスルームで劣情を催した僕を、少しうつむき加減で制する君。参っちゃうね…どうしてもここでしたい気分になってしまう…ちょっぴり悪い男になった気分だよ。でも、君に嫌われたくないからグッと我慢。優しく君を抱え上げると、騎士のようにベットに運ぶ。腕の中のお姫様は恥ずかしそうに俯き続けている。お願いだから、隠している可愛らしい顔をあげて、僕に見せてくれないかい?この世界に、君以上に可愛いものなんてないのだから。そんなものを、一人占めしているのは最高の罪だよ。…ほら、顔を上げて…ふふっ、それでも嫌なのかい?仕方ないなあ。そんな君は、神様に代わって、僕がお仕置きしてあげないとね。

 そっとベットに横たえ、キスを一つ落とす。自分の身体もシーツの合間に滑りこませ、早速悪戯を開始する。胸の可愛らしい飾りを弄ってやると、甘い甘い声を漏らす。手触りの良い肌を優しく愛撫し続け、悪戯な指が下半身にまで行きつく頃になると、君の形の良い目尻から、すっと涙が零れ落ちた。蕾を刺激してやると、甘い声はさらに甘さを増し、僕を求めて収縮を繰りかえす。でも、そう簡単に僕を与えてはあげないよ。ふふっ、これは罰なんだからね。
「ほら、指をこんなに締めつけて…僕が欲しいかい?欲しいなら欲しいって言わないと、あげないよ?」
「あああん!!い、意地悪!」
 僕は掻き回している指を増やすと、さらに君を責めたてた。
「ほら、言って。御門が欲しいって」
「み、…かど…が、欲……し、い」
「良く出来ました」
 僕は子津君の呼吸にあわせて、ゆっくり彼の内部に押し入った。
 熱くてきつくて、それでいてねっとりと絡みついて。
 一度この味を知ってしまうと、二度手放せない。そんな魔性の魅力が其処にはあった。

 気を失った彼を清めて、汗と体液でドロドロになってしまったシーツを変えた後、彼を腕に抱きしめて眠りにつく。そして、二人で朝を迎えて、僕が美味しいブレックファーストティーを入れるのが日課だった。それなのに…。
「今日は、練習はりきっちゃって。いつもより汚れてるんで、お風呂、一人で入るっす…」
「最近、そればっかりだね…」
「そ、そうっすか!?そんなことないっすよ…!!!」
 そう言って、僕から逃げるように一人バスルームへと消える君。僕は呆然と立ち尽くすしかない。
 眠る前もそうだ。
「子津君、綺麗だよ…僕に天使を抱かせておくれ…」
 ライトを落としながら、君の耳もとでそう囁く。
「明日、朝練で早いんで、今夜はもう寝るっす…」
 君は僕の腕からするりと抜け出し、ダブルベットの端で丸まってしまう。
「最近、全然愛しあっていないじゃないか…朝練より、恋人を優先させる夜があったっていいだろう!?」
「キャプテンは野球Loveなんでしょう!?そういう真面目なキャプテンだから、好きになったんです。不真面目なのはいけないと思うっす」
 …そう言われちゃ、出せる手も出せないというものだよ…。

「ふう〜」
「そんなにため息をつくななのだ。気持ち悪いのだ」
 そんなこんな、ユニフォームに着替えながら考えを巡らせていると、鹿目君に声をかけられた。
「何をそんなに悩んでいるのだ。牛尾のことだから、きっとまたどうでもいいことをグチグチ悩んで、ドツボにはまっているに違いないのだ」
「鹿目君……これは友達の話なんだけど、聞いてくれるかい!?」
「友達の話〜とかいうやつは、たいてい自分の悩みであることが多いのだ」
「……まあ、そう思ってくれて構わないよ。その友達には恋人がいるんだ。その恋人とは
毎日のように、愛を確認する為、身体を重ねあっていたんだ」
「牛尾も好きモノなのだ」
「………それが最近、指一本ふれさせてくれなくて。バスタイムも別だし、誘ってもさり気なくかわされるし」
「それは、きっと牛尾のことが嫌いになったのだ。子津は優しいから、いいだせないだけな…」
「そ、そんなことはないはずだよっ!ベットは今でも一緒だし、キスだけなら嫌がるそぶりはないしっっ!!」
 僕は慌てて頭を振った。
「キスは嫌がらない…それなら、なにか身体を見せられない理由があるのだ。例えば、身体に別の男のキスマークがあるとか…」
「べ、別の男!!!!!?」
 僕の脳天に雷が落ちたような衝撃が走った。

 確かにそう考えればすべてが繋がる。バスタイムとエッチと、共通するのは、僕に裸体を晒さなければならないこと。裸体を見られるのを頑ななまでに拒否するのは、子津君の身体には僕に知られてはならない秘密があること。野球のことや、学校のこと。子津君は隠し事をするような人間では絶対にない。そんな子津君が僕に対して隠さねばならないことというのは……ウ・ワ・キ!!?

 僕はいてもたってもいられなくなった。今日の部のことは蛇神君に頼んで、丁度部室に入って来た子津君を攫ってベンツに放りこむ。
 頭にカーっと血がのぼる。窓ガラス、それに運転席とこちらを仕切るガラスがマジックミラーなのをいいことに、無我夢中で子津君の学ランをむしろうとしてしまった。
「な、なにするんっすか!!」
「子津君、相手は誰なんだっっ!!猿野君?いや、犬飼君も怪しいぞ…いや、辰羅川君かもしれない……まさか司馬君じゃっっっ!!!」
「相手って?…キャッチボールの相手っすか?」
「今更とぼけないでおくれよ。まてよ、十二支とは限らないな…他校である可能性も……こんなことなら、君に応援に来てくれなんてねだるんじゃなかったよ!」
「…さっぱり訳がわからないっす」
「ああもう、君を失うなんて耐えられない。かっこ悪い男と思ってくれて構わない。お願いだから、僕を捨てないでくれ!!!」
「キャプテンを、捨てる…?」
「僕の何が悪かったんだ…分からない…率直に言ってくれて構わないから…直すから…捨てないで…」
 僕は子津君を抱きしめた。本当にかっこ悪い。涙が後から後から溢れてきて止まらない。腕の中の子津君もびっくりしていたようで、少しの間、身体を硬くしていた。でも、しばらくすると、おずおずと僕の背中に手を廻し、きつく抱きしめ返してくれたんだ…。

「それで、どうして僕がキャプテンを捨てるなんて考えついたんっすか?」
 僕の涙がおさまると、腕の中の子津君は、上目遣いで尋ねてきた。
「だって君、……近頃、僕に肌を見せてくれないじゃないか。他の男のキスマークでもあるんじゃないかと心配で…」
 子津君はクスクスと面白そうに笑った。口元に拳を当てる、小動物のような仕草……ああ子津君、こんな時でも君は僕を魅了して堪らないよ。
「キャプテンも案外心配性なんっすね。そんなこと絶対ありえないっすよ。だって、僕、キャプテンしか見えてないっすから……って、なに言わせるんっすかっっっ!」
 顔を真っ赤にして、僕の胸をポカポカを殴る。ああ、やっぱり可愛い!!!
「じゃあ、なんで僕に肌を見せてくれなかったのかい?」
「それは……」
「ほら、やっぱりいえないじゃないか。そりゃ僕だって君を疑いたくなんかないけれど…」
 また悲しくなってきた。それが顔に出たんだろう。子津君はしばらく考え込んでいた様だったけれど、思いきった様子で口を開いた。
「キャプテン、絶対笑わないって約束できるっすか?」
「笑わないよ。約束する」
「じゃあ、今日は一緒にお風呂に入りましょう。その時に…」
 子津君は恥ずかしそうに鼻の頭を掻いた。

 先にバスルームに入って待っていると、タオルを前に当てて、恥ずかしそうに子津君が入って来た。思わず近寄って、タオルを外させ胸元をチェックしてしまった。心配していたような、鬱血はない。
「恥ずかしいっすから、そんなに見ないで……そうだ、キャプテン。背中流してあげますから、後ろ向いて…」
 僕が腰掛け、後ろを向くと、子津君は膝立ちでスポンジを泡立て始めた。十分に白い泡が立つと、僕の背中を優しく擦り始めた。
「どうっすか?気持ちいいっすか?」
「気持ちいいよ、子津君。そんな台詞、ベットの中でも言って欲しいくらいだよ。子津君、恥ずかしがり屋さんだから…」
「ば、馬鹿なこと言わないで下さい!!!」
 鏡に、真っ赤になった子津君の顔が映っている。それが可愛くて、思わず顔が綻ぶ。
「こんどは子津君の番だよ。後ろ向いて…」
 振りかえって彼に微笑みかけると、子津君は困ったような顔をした。
「キャプテン、さっきの約束、覚えてるっすよね?」
「笑わないってやつかい?覚えてるよ」
「ほんとのほんとに、笑わないで下さいっすよ…」
 子津君はぎこちなく後ろを向いた。
 僕は一瞬目を疑った。そして、思わず吹き出してしまった。
「笑わないって言ったのに……」
「だって、あんまり可愛くて…」
 子津君の可愛いお尻には、赤ちゃんのように蒙古斑があったのだ。

「先週の水曜日。紅白戦でスライディングしたんです。その時、勢い余って青アザ作っちゃって…それから消えないんです」 
 バスタブに身体を沈め、後ろから子津君を抱きかかえる。薔薇の香りに酔いながらお喋りに興じている時、子津君は言った。
「鏡で見たら、ほんと赤ちゃん見たいで……恥ずかしくって」
 そう言うとまた真っ赤になる。ほんと、子津君って飽きない子だよね。
「笑っちゃってごめんよ。でも、僕は本当に君の心変わりが心配だったんだ…それにずっとお預けでキツかったし……代償として、今夜は寝かせないよ」
「キャ、キャプテン!?」
「君だって、僕が恋しかったよね?今夜は頑張っちゃうから」
 僕は慌てふためく彼を、力いっぱい抱きしめた。
 彼の髪から香るシャンプーが、一層劣情を高めてくれる。
 ようやく心配事も解消されたし、今夜は最高の夜になりそうだ。

                                [THE END?]