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『十二支迷作激場・ねむり姫』

 

★キャスティング

 

オーロラ→ねずっちゅー

王子→ミカちゃん(牛尾様)

魔女→鹿

パパン→犬

ママン→たっつん

仙女→蛇、みぞう、こてっちゃん、いのりん、ぴの、しばくん。

糸巻きばーさん→天国

 

※ご都合主義により、色々脚色しています。

 

 

 

1.

 

 むかしむかしあるところに、十二支王国という国がありました。

 十二支王国は根暗でガン黒な王様ともみ上げの長いお妃様が治めていましたが、王様は自分の生活環境に興味が無く贅沢もせず、またお妃様は知性派を気取っていたので国はそこそこ豊かで、国民も幸せに暮らしていました。

 そしてある日、国にはとてもめでたいことが起きました。熟年夫婦のように浮いた話の無かったお妃様と王様の間に、玉のようにかわいい赤ちゃんが生まれたのです。

 いつの間に、と国民たちは下世話な妄想を繰り広げましたがそれはさておき、王様とお妃様は子供に忠之介という可愛い(?)名前を付けて、お祝いの宴を開きました。
「ふふふ・・・まことに目出度いですね。ですが、ここが悩みどころです。どういった招待客をセレクトするか・・・」
 お妃様は眼鏡に指を当てて誰を呼ぶか考えましたが、結局十二支王国の中でも有名な、六人の仙人を呼ぶことに決めて、招待状を送りました。

 

 そして宴の日、六人の仙人はみんな、祝福の言葉とともにお城に集まってきました。
 一人目の仙人は姫を見て、言いました。
「うっわーっ、可愛い赤ちゃんだね!! 本当に辰羅川くんが生んだの!? すっごい無理っぽいよね!?」
 一人目の仙人は小さくて愛らしかったけれど、案外腹が黒いことで有名でした。
 しかし、おもちゃを与えておけば親切にしてくれると予めリサーチしておいたお妃様は、グサリと来る一言も気にせずにそっとゲームボーイアドバンスのソフトを仙人の袖の下に滑り込ませました。
「わーいっ!! あ、これボクやりたかったんだよねぇ〜!! ありがとう!!」
 仙人は注意深く中身をあらためてから、嬉しそうにぴょんぴょん飛び跳ねました。
 以前、別のお兄ちゃんに最新ソフトと偽って『一揆』(FCソフト)をつかまされたことがあって、用心深くなっていたのです。
「それじゃあ、赤ちゃんには特別大サービスで祝福してあげるねっ!! この子は将来、国中の誰よりも足が速くなりますよーにっ!!・・・あ、ボクは除いてだけど」


 二人目の仙人は、姫を見ても、何も言いませんでした。
「えっとねぇ。シバくんはおめでとうって言ってるよ!!」
 しかしどんなに耳を澄ましても、お妃様にも王様にも二人目の仙人の声は聞こえませんでした。しかし、一人目の仙人が通訳してくれるので安心です。
「え?・・・すっごい可愛い子・・・? ふーんっ、そうっ、可愛い子なんだっ!? シバくんこういう子が好みなワケ!? いや、別に駄目なんて言わないけどねっ!?」
 ・・・嘘です。
 それはそれで安心では無いようです。一人目の仙人が姫をみる目がだんだん剣呑になってきて、お妃様と王様は焦りました。
「・・・えっ? 子供はみんな可愛い? ・・・・え・・・うん・・・・・・・って、もーヤダなぁっ!! そんなこと言われたら困るよ!!・・・あ、でも辰羅川くんに産めるんだからボクでももしかしたらイケるかも!?」
 どうやらご機嫌は治ってきたようですが、宴の席で妙なことをおっぱじめるんじゃないかと王様とお妃様は別の意味で心配になりました。
「おい・・・そろそろ祝福をして欲しいんだが」
「あ、うん・・・えーっとね、この子が将来、国中の誰よりもリズミカルになりますようにって、祝福してくれたみたいだよ!! 良かったね!!」
 いちゃこらしながら宴の席に下がって行った二人を見送って、王様はお妃様に尋ねました。
「・・・なぁ・・・リズミカルな子ってどんなんだ?」
「・・・さぁ、ダンスが達者とかじゃないでしょうか・・・・」

 

 そして三人目の仙人、四人目の仙人と祝福は続きました。
 「自然を感じる子になるといいっちゃね〜」
 「この子はこの国でナンバーワンにBODYが柔らかくなるZe!!」
 五人目にいたっては「うが〜」だけ、とだんだんワケのわからない内容になっていきましたが、王様は細かいことは気にしないのでOKでした。


 そして六人目、最後の仙人が祝福を授けようと姫に近づいたときです。突然お城の窓ガラスを突き破って、大広間に何かが飛び込んできました!!


「何だYO、こりゃ!?」
「あぶなか〜、ガラスが粉々たい」
「それより見ろYO!! 怪我してるヤツがいるZe!?」
 三人目の仙人はそれを見て、首を傾げました。怪我をした人の傷口はパックリと綺麗に開いていて、まるでかまいたちにでもあったかのようになのです。
「おかしかね・・・今日はかまいたちなんて起こるような天気じゃなかとよ・・・?」


 みんな騒然としてあたりを見回す中、王様はいちはやくその正体に気づきました。そう、それは王様も年がら年中投げている、野球のボールだったのです!!
「これは・・・!?」
その時、大広間の扉がバーン!! と大きな音を立てて開きました。
「あ、あの人は・・・」
 なんとそこに立っていたのは他でもない、十二支王国の六仙人の一人、鹿目でした!!
「よくも僕をはみ出し者にしてくれたな・・・」
 声を荒げることこそ無かったものの、鹿目が怒っていることは誰の目にも明らかでした。いつも片時も離さないマフラーが、ゆらゆらと、持ち主の殺気でたなびいています。
 まさしく彼こそが、たった今剃刀カーブを城の広間に向けて何球もブチ込んだ犯人なのでした。


「待ってください、鹿目先輩」
 人々があまりのことに呆気に取られている中で、一番最初に冷静になったのはお妃さまでした。
「私たちは貴方をはみ出し者などにはしておりません。何故ならば、私は確かに貴方宛にも招待状をお送りしたからです」
「うるさい!! そんなもんは僕には届いていないのだ!!」
 お妃様はその返事を聞いて、首を捻りました。たしかに使者は、仙人の使い魔に招待状を渡しました、と言っていたのです。
「いまさらしらを切るなんてサイアクなのだ!! お前らなんてみんな大っ嫌いなのだ!!」
 お妃様が不思議に思っている間にも仙人の怒りはエスカレートしていきます。
「待ってください・・・ひぃ、ふぅ、みぃ、よん・・・」
 そこでお妃さまは大変なことに気づきました。今、この場には鹿目を含めて仙人は七人いるのです!! これはどうしたことでしょう!?
「・・・どうやらおかしいようです、鹿目せんぱ・・・」
「しつこい!! どっちにしろお前たちが僕を抜きにして今まで楽しくやっていたのは本当のことなのだ!! もう、こうなったら呪ってやるのだ!!」
 鹿目はお妃様の話など全く聞き耳を持たずに、戦々恐々としている人の群れをくぐりぬけ、姫の眠っているゆりかごの前に立ちました。


「この子に災いあれ!! 十六年後の誕生日、姫は糸紡ぎの針に刺されて死ぬことになるのだ!!」

 鹿目は声高に叫ぶと、三象を連れてお城を立ち去ってしまいました。そこでお妃様はやっと気づいたのです。自分の送った招待状を受け取った鹿目の使い魔=三象が、それを自分あてのものだと思い込んでやってきてしまったのです。仙人でもないのに・・・

「アンビリーバブル・・・私としたことが、とんでもないケアレスミスを・・・」
  お妃様は大広間の床に膝をつき、自分を責めました。しかし、その肩に手をおくものがいたのです。

「犬飼君・・・」
 と言ってふりむいてみたものの、それは王様ではありませんでした。額に輝く大極図、それはまさしく十二支王国の六仙人の最後の一人、蛇神様だったのです。

「諦めること無かれ。我に妙案が或る也」
「・・・本当ですか!?」
 お妃様は希望に顔を輝かせて立ち上がりました。可愛い娘の命を救う手段があるというのです。
 蛇神様は無言で頷くと、姫のゆりかごの側まで歩いていきました。王様とお妃様も、不安に顔を曇らせたまま姫の安らかな寝顔を覗き込みました。他の四人の仙人たちもそれに続きます。


「我はこの童に祝を与えん。この童は針に刺されても死には至らぬ。ただ、百年間眠り続けるだけで命に別状は無い也」


 その場にいる誰もが『どうせだったらさっきの呪いごと打ち消したれよ』と思いましたが、口には出しませんでした。
 六仙人のうちで最もキレやすく恐ろしいのはさっきの鹿目先輩ですが、キレた時に最も恐ろしそうなのは他でもない蛇神様なのです。来世まで祟られそうですから。

 とにかく、これで姫の命は救われました。五人の仙人たちに重々お礼を言って、その日の宴はお開きとなりました。

 

「・・・しかし、厄介なことになりましたね・・・百年も眠り続けるなんて・・・」
 みんなが帰ってからも、お妃様は頭を悩ませました。
「・・・大丈夫だろ」
「何か、考えでもお有りなのですか?」
「・・・いちおう」

 次の日、王様のおふれが十二支王国全土に出ました。
『国内で一切の糸紡ぎを禁止する。糸車はすべて廃棄処分とす』
 王様らしい、ラディカルで大雑把なおふれでしたが、可愛い姫さまの命がかかっているのです。国民はみんな素直に紡績業から手を引いて、糸車を打ち壊しました。
・・・そう、一部のならずものをのぞいては・・・